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Lee-Byung-hun addicted

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『Lovers in Hong Kong 1』

『Lovers in Hong Kong 1』


武道館のイベントを無事終えたその夜。

関係者が開いてくれた誕生日パーティーから引き上げた彼はそのまま下落合の揺の元に急いだ。

一緒に過ごせる時間は少なくとも中国に向かう前にやはり一目でも会いたい・・・。



「ねぇ・・・一緒に行ってもいいかな」

揺は彼の腕の中でつぶやいた。

カーテンから覗く初夏の空はすでに白み始めている。

「え?・・・・どうしたの?」

少しうとうととしていた彼はいつもと違う揺の言葉に驚いた様子で目をこすった。

「中国・・・・行ってもいいかな。」

揺はそうつぶやきながら彼のたくましい鍛え上げられた胸板を指でつついている。

「どうしたんだよ。珍しい・・揺が現場に来たがるなんて・・地震でも起きるんじゃないか」

彼はちょっと笑ってそんな揺を抱き締めた。

「冗談じゃないのよ・・・。なんだか心配で・・」

「俺を信じてないの?浮気なんてしないよ」

ビョンホンは笑いながらそんなことをつぶやく彼女の顔を覗き込んだ。

「そうじゃなくって・・」

「わかった・・お前、ウソンに乗り換える気だな」

彼はちょっとにらみを利かせてそういうと揺に覆いかぶさった。

揺の首筋にそっと彼の唇が触れる。

「・・・だから・・・冗談じゃなくて・・・」

揺の言葉は長くは続かない・・・・・・・・。




「だから・・行きたいのよ。敦煌」

Tシャツを着る彼の背中に向かって揺は口を尖らせて話しかけた。

窓の外ではもう蝉がうるさいほどに鳴き、太陽はいつのまにかだいぶ高くまで昇っていた。

「だめだってさっきから言ってるだろ。
あんなところ。
建物もろくにない山奥にセットだけ立てて・・
トイレだって水道だってまともなものはないようなところにお前を連れて行けるわけない。」

何度言っても引き下がらない揺に彼は噛んで含めるように言い聞かせる。

「だから行くんじゃない。
心配なんだもん。
私、そういう旅行には慣れてるし・・
ドアがないトイレでも紙がなくても大丈夫よ。全然。
洗濯でも飯炊きでも何でもする。
ほら、マネージャーってどう?スタッフの一人で十分なんだから。
黙ってれば私だってわからないわよ。」

「だから・・・俺がお前のことを心配してるの。
いいか。まだ身体だって本調子かどうか・・とにかく連れて行けない。
だめ。仕事の邪魔」

「・・・・・・・・」

仕事の邪魔と言われ、それ以上何も言えなくなった揺は頭からふわふわのタオルケットをかぶってふて寝を決め込んだ。

「もう・・・・揺」

困った彼が伸ばしてくる手をタオルに包まったまま揺は振り払う。

「参ったな・・強情なんだから・・・でも今回は絶対ダメだから」

彼はそういい残すとベッドから立ち上がり揺の部屋のカーテンを開けた。

「今日も暑いな・・・明日からはもっと暑いのか・・」

ちょっと困ったような彼の視線の先にはふて寝をしている揺がいる。

頭からかぶったタオルケットの下のほうから彼女のくるぶしがのぞいていた。

「全く・・・」

ダメだと言ったが・・・自分を心配して中国の山里に一緒に行きたいと駄々をこねる揺がやっぱり愛おしくて仕方がない。

彼はちょこんとのぞく彼女のくるぶしを眺めながら荒野の真ん中のテントの中、粗末なベッドの上で揺を抱きしめる自分の姿を想像した。

地面には見たこともない虫がいる・・大きな蛾の影がテントに映る・・・。

その奥には興味津々の男たちが鈴なりだ・・・

ビョンホンは頭を振った。

「やっぱりダメ。危なくって仕方ない」

彼はそうつぶやくと覗いていた彼女のくるぶしをそっと捕まえた。



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